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映画『バシールとワルツを』を見て。

昨日、エルサレムなど各地で、心から待ち望まれていた雨が降りました。 ここ、パレスチナの地では、水資源を争って人が死んでいきます。 だから、この地に降る雨には、平和の、命の匂いがします。


そんな雨が降る中、イスラエル/フランス/ドイツの合作映画『バシールとワルツを』を見ました。


バシールとは、1982年に、イスラエルの後押しでレバノンの大統領に就任し、 その直前に爆殺された、マロン派キリスト教徒指導者の名です。 そして、このマロン派キリスト教徒の民兵組織「ファランジスト」は、 1982年、ベイルートのサブラ・シャティーラ難民キャンプで パレスチナ人の民間人を、3日3晩、 銃や斧や棒切れで殺し続けたことでも、名を知られています。


そして、そのキャンプのまわりには、イスラエル軍が駐留し、 パレスチナ人がキャンプから出てこられないように見張ると共に、 ファランジストの民兵たちに、水や銃弾を供給していたそうです。


この映画は、そんな「バシール」と、「ワルツ」という名の残虐行為を踊った、イスラエル軍兵士たちの告白の映画です。 (詳細は、ネタばれになるので、書きません。)



見終わった後の感想は、なによりもまず、「気分が悪い」ということに尽きます。 それから丸一日、なんでこんなに胸糞が悪くなったんだうと、考えていました。


そして、俺が至った結論は以下のとおりです。


まず、兵士としての戦場での義務は、上官の命令に従って、人を殺すこと、です。イスラエル人の知り合いは、 「どんな命令にも従うこと。それが軍服を着た時の唯一の大義である」と言っていました。


それだけです。


だから、レバノン侵攻において、 イスラエル兵たちは、残虐行為も平気でやったし、ファランジストの虐殺も止めなかった。 すべては、「命令」なのです。


この作品の作者は、実際にレバノン侵攻に参加し、そんな体験からトラウマを抱えました。 トラウマを抱えたというよりも、あまりに非人間的な世界にいて、 あまりに非人間的なことをやっていたので、 本能的な部分で自己防衛機能が働いて、忘れてしまった、という方が正しいでしょう。


とにかく、主人公=作者は、 自分が何を忘れたのかを思い出すために、兵役時代の仲間に会い、少しずつ、自らの見たものを思い出していきます。 この映画は、それを淡々と語っていきます。 そう、この映画が胸糞悪いのは、 とても残酷なことを、あまりに「淡々と」語っているからなのだと思います。 では、何でこんな表現方法になってしまうのでしょうか。



それは、作者が、自らのトラウマを、 そのまま画面に焼き付けているから、 あるいは焼き付けることしかできないからだと思います。 だから、この映画を見る側は、レバノンでの作者の体験を追体験します。 そして、ついでに作者のトラウマも追体験します。「させられる」と言った方が正確かもしれません。そういう意味では、この映画は、良質の「戦争映画」と言ってもいいのでしょう。


もちろん、土井敏邦さんがご自身のWebコラム(http://www.doi-toshikuni.net/j/column/20081207.html) で書かれていらっしゃるように、 この戦争がイスラエルによるレバノンへの侵略戦争であり、イスラエル人がパレスチナ人とレバノン人を人間として見られないところにこそ 本当の闇があり、問題の根源がある、という反論には同意できます。 そして、土井さんが、この映画がそのような背景と構造を語らないことを問題視されるのも頷けます。


それは、まさに正論です。 正論ではありますが、使い古された正論でもあると俺は思います。 そして、この正論だけでは語れないところに、 この戦争の問題、ひいては、イスラエル社会の深い闇があると、俺は思います。



さきほども言ったように、この映画は、トラウマを描く映画ではなく、 作者のトラウマを焼き付けた映画です。 そして、イスラエル人は、自分のトラウマをそのまま焼き付けるような、 そんな映画しか作れないのかもしれないと思います。これは、中東戦争を扱った他のイスラエル映画を見て感じたことでもあります。 そして、この点にこそ、イスラエル社会の問題の根深さがあると俺は思います。


つまり、主人公=作者は、 レバノンで、自分がどのように、どこまで人間的ではなくなったのかを語ることで、 人間性を取り戻そうとするのですが、結局、人間性の回復を、非人間的にしか表現できていないのです。言い換えると、戦争体験を通して自らの中に内面化された、非人間性を介してしか、 その体験を語ることができないのです。


その理由はおそらく、イスラエルにとって、 戦争は過去のことではなく、現在進行形だからでしょう。 戦争を悪いものとして、完全に断ち切って語ることができないからでしょう。「人間味に溢れた」戦争映画を作るには、 まだイスラエル社会のトラウマは癒えていないのでしょう。 むしろ、このトラウマを理由にして、 占領をつづけ、他国への、パレスチナ人への攻撃を繰り返すこの国は、 毎年、毎年、新たなトラウマを抱えてしまっています。 これは、まさに、イスラエル社会の闇から生まれる悪循環です。



だから、年初めのガザ地区での虐殺も、いとも簡単に起こってしまったのだと思います。この映画を見た時に感じた、気持ち悪さや寒気は、 今年初め、ガザ地区で虐殺が起こっているときに、 イスラエル人の友人たちと話していて感じたそれと似ています。 多くのイスラエル人は、1,300人以上の人たちが、 数キロメートル離れたところで、残酷に殺されていても、 自分たちの行動を正当化することに必死で、 殺人行為を正当化すること、そして殺人行為そのものの持つ残酷さを、自らの目から覆い隠してしまっていました。 親しい友人たちの、そんな顔色一つ変えずに、 攻撃を正当化する姿に、寒気がしたのを今も鮮明に覚えています。


そして、彼らが語った説明の多くは、 それなりに筋は通っていましたが、 土井さんが言うように、 「パレスチナ人は人間だ」という視点は、抜け落ちていました。 抜け落ちていたというよりも、 それを認めることへの恐怖心があるようにも思われました。


この映画の中でも、作者の友人が、イスラエル社会でよく聞かれる、典型的な主張を繰り返します。 主人公がそれをどう思ったかは、映画からは分かりません。 ただ、この映画が何よりも多くを語るのは、 戦争の話をする時の、 どことなくぎこちないイスラエル人の胸の張り方や、 居心地の悪そうな苦笑です。 (彼らがこれまで行ってきたことには決して敬服しませんが、これを描ける、作者の観察力と技術には素直に敬服します。) イスラエル人は、このぎこちなさや居心地の悪さを見て、共感するでしょう。なぜなら、イスラエル社会では、 この居心地の悪さや、罪の意識を持たないように踏ん張ることの「崇高さ」が、共有されているからです。


土井さんは、この映画は「背景や構造」を語っていないとご自身のブログに書かれています。 俺はそんなことはないと思います。 なぜなら、イスラエル社会に深く根付いた、このような居心地の悪さや、
罪の意識を持たないことへの価値意識が、 レバノン戦争の「背景や構造」の一つであったことは間違いないからです。




では、作者が、一番語りたかったこととは、何でしょうか。



俺は、主役が、とあるヨーロッパの国に住む昔の友人を訪ねる場面に、 作者の主張が最もよく表現されていると思います。 この場面に登場する友人は、 ファラフェル(ヒヨコマメのコロッケを入れたサンドウィッチ)を3年間売り続けて、 見渡す限りの大きな土地を手に入れました。


そこで、主役は尋ねます。


「これを全部ファラフェルを売って手に入れたのか?」


友人は自嘲気味に答えます。


「そうだ。3年間売っただけで手に入れた。あそこからここまで全部俺の土地だ。 40ドナム(1ドナムは1,000㎡)ある。」



この場面は、イスラエル国家と社会への皮肉に満ちていると私は思いました。 なぜなら、「ドナム」という単語の響きは、 イスラエルでは、土地面積以上の意味を持つからです。 入植者社会イスラエルでは、 流された血の量に値するものとして、そして流された血を贖罪するものとして、 土地は崇高なものだからです。 だから、この「ドナム」という単語の響きは、イスラエル人にとっては、 新たな地での民族の「再生」を意味するだけでなく、 そのために流されてきた人間の血をも想起させるでしょう。


一方、ファラフェルは、イスラエルでは、ジャンクフードの王様です。



つまり、この場面を通して、作者が伝えようとしているのは、 ファラフェルを3年も売っていれば手に入ってしまうようなもののために、 イスラエル社会は、若者たちを戦場に送り、残虐行為を行わせ、 一生癒えないトラウマを抱えさせたのかという イスラエル社会に対する強烈なメッセージなのです。


さらに、この場面では、この友人が手に入れた土地は、一面雪に覆われています。 そこでは、一人の少年が、玩具のライフルを持って戦争ごっこをしています。 この光景は、 「ドナム」という単語を聞いて赤い血を想起した イスラエル人にとっては、心に焼きつく映像でしょう。そして、イスラエル人は、この映像の子どもと自分を重ね合わせ、あるいは自分たちの子供たちとを重ね合わせることでしょう。 だから、この光景が、イスラエル人に語りかけていることとは、 イスラエル兵士たちが戦場で行ってきたことの馬鹿らしさであり、 この行為の背景にあるとされる「大義」の馬鹿らしさなのだと、私は感じました。


作者は、一方に「ドナム」、「ファラフェル」という単語の響きと、 他方に、見渡す限りの白い広野と、そこで遊ぶ子供の姿を置き、 それを対照させることで、 イスラエルが、土地を手に入れるために、これまで行ってきたことが、 どれほど馬鹿げたことなのかを、イスラエル社会に問いかけたかったのだと思います。


そして、この馬鹿らしさは、兵役に就くことが義務付けられ、 命令に従って何でもすることを要求される イスラエル・ユダヤ人の若者たちの多くが 心のどこかで思っていることだと思います。 国民皆兵制度を持つイスラエル社会では、 徴兵拒否まではしなくても(徴兵拒否をすると刑務所に送られる)、 外国に行ったり、仮病を使うなどして 徴兵から逃げる若者が増えています。 この、イスラエル人の多くが心のどこかでは思いながらも、 なかなか口に出すことのできないアホらしさを、 作者は語りたかったのだと、 俺は、雨の匂いを嗅ぎながら思いました。(終わり)


今野泰三(ヘブライ大学ロースバーグ国際校、パレスチナチーム・ボランティア)
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緊急報告会のお知らせ

今週の木曜日に行います緊急報告会のお知らせです。



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■1月15日■ 緊急報告会 パレスチナ:ガザを生きる人々の現状
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 12月27日から攻撃を受け続けているガザ地区。すでに900人以上の人々が犠牲
になっています(1/13現在)。この地では攻撃を受ける前から流通の封鎖などに
より、最低限の生活を送ることすら難しい状況にありました。それは「人間の尊
厳への冒涜」とまで言われています。
 そんなガザでJVCは子どもの栄養支援の活動を続けてきました。また緊急に
医療支援も開始しました。これらの活動を現地で行っているエルサレム駐在員の
小林和香子と福田直美に電話をつなぎ、報道では伝わらない現地の声をお伝えし
ます。そして、ガザで共に仕事している現地NGOのスタッフの声も(電話録音)
お伝えします。
また、ガザの現状、根本的な問題について、イスラエル・パレスチナ問題の専門
家である臼杵陽氏と共に考えていきます。

【内容】
 JVCルサレム事務所日本人スタッフの電話報告
 ガザからの声(現地NGO関係者の電話報告:録音)
 ガザ危機を考える
   ゲスト:臼杵陽(日本女子大学教授)
 司会進行:JVCパレスチナ事業担当 藤屋リカ
【日時】2009年1月15日(木)19:00~21:00
【会場】東京ウィメンズプラザ 視聴覚室
【定員】100人
【住所】東京都渋谷区神宮前5-53-67
【アクセス】表参道駅下車徒歩7分、渋谷駅下車徒歩12分
【地図】http://www.tokyo-womens-plaza.metro.tokyo.jp/contents/map.html
【参加費】500円(JVC会員は無料) 
【お問合せ】日本国際ボランティアセンター(JVC)
TEL 03-3834-2388、jvc-jer@ngo-jvc.net(担当:藤屋)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



当初の予定を変更して行います。ガザの危機について、そして根本的にそこに存在する問題について、是非たくさんの方と一緒に考えていきたいと思います。
N子  

「ガザに光を!」

今日、ガザでの停戦を求める緊急行動
「ガザに光を!」
ピースパレードとシンポジウムが行われました。

今日には新聞やTVでもニュースとして取り上げられていることでしょうが、
パレボラブログでも、
このイベントに参加したメンバーからこのときの様子や感想をアップしてもらおうと思います。

IMGP0825.jpg


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イベントのお知らせ&今日のボラチーム

今週末、東京で行われるイベントのお知らせです。たくさんの方のご参加をお待ちしています。

□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
              ガ ザ に 光 を !             
       即時停戦を求めるピースパレード&シンポジウム      
      
          ★1月10日(土)に緊急開催★          
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

 2008年から開始されたイスラエル軍によるガザ地区への大規模な攻撃は、
新年になってもますます強まり、これまでに伝えられた犠牲者は多数の子どもを
含んで550人を越えています。今後もイスラエルは停戦する気配はありません。
150万人のガザ地区の人々は、これまでもイスラエルの封鎖によって、医療や
食料、燃料の不足に苦しめられていました。今度はその人々の上に爆弾が落とさ
れています。

この人道的危機を前に、これまでパレスチナ問題に様々な形で関わってきたN
GOが共同で、この軍事行動への抗議の意志を示し即時停戦を求めるピースパ
レードとシンポジウムを行います。
 皆さんもぜひこのアピールに加わってください。たくさんの声が、この惨状を
変える力になります。

────────────────────────────────────
 開催日:2009年1月10日(土)
────────────────────────────────────
■プレイベント
  12:30上映会『パレスチナ1948NAKBA』(監督 広河隆一)
       場所:増上寺 慈雲閣(都営三田線「御成門」駅から徒歩3分)
       共催:浄土宗平和協会
       (開場:12:00)(詳細計画中)

■ピースパレード
  15:30「芝公園23号地」集合
      (都営三田線「御成門」駅A1出口から徒歩5分。東京タワー近く。
       案内スタッフがおります)
  16:00出発、パレード開始
      (芝公園から六本木方面に向けて歩きます)
  17:10「六本木三河台公園」にて終了。キャンドルで祈りを捧げます。
      (日比谷線・大江戸線「六本木」駅6番出口から徒歩2分)

  ★パレードのテーマは「ガザに光を!」。
   ペンライトや懐中電灯などの光るものをぜひ持参ください。

■シンポジウム
  【時間】18:30~20:30 
  【会場】聖アンデレ教会
  【アクセス】東京メトロ日比谷線「神谷町」駅1番出口から徒歩10分
        (神谷町駅はパレード終了地最寄の六本木駅から1駅)
  【住所】東京都港区芝公園3-6-18 TEL 03-3431-2822
  【地図】http://www.nskk.org/tokyo/church/map_html/andrew_m.htm
  【参加費】無料
  【内容】・リレートーク:池田 香代子さん
                (『世界がもし100人の村だったら』再話者)
              広河 隆一さん(ジャーナリスト) 
              パレスチナに関わるNGOのアピール 他
      ・現地ガザからの声(電話録音)(予定)

────────────────────────────────────
■主催:1・10 ガザに光を! ピースパレード実行委員会

■呼びかけ団体:
特定非営利活動法人 アーユス仏教国際協力ネットワーク
社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
日本山妙法寺
日本聖公会東京教区「エルサレム教区協働委員会」
日本パレスチナ医療協会
日本YWCA
特定非営利活動法人 パレスチナ子どものキャンペーン
パレスチナの子供の里親運動
ピースボート
平和をつくり出す宗教者ネット
『1コマ』サポーターズ
────────────────────────────────────

<お問い合わせ>
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル6F TEL 03-3834-2388/FAX 03-3835-0519
http://www.ngo-jvc.net
info@ngo-jvc.net
(パレスチナ事業担当 藤屋、 広報担当 広瀬)

●JVCはガザ緊急医療支援を開始しました。最新情報はこちら●
http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/palestine/200812gaza.html


追記は今日のボラチームの様子。

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