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パレスチナ訪問記_ヘブロン

バサルのちアサル
2013年6月発行の第21号より

現地を訪れたボラチームメンバーによる、バサルのちアサル掲載記事を転載します

 ことし3月、ちょうど3年ぶりにパレスチナを訪れた。
今回、はじめてヘブロンを訪れたことが忘れられない。ヘブロンは西岸第二の都市で、商業の盛んな街だといわれている。実際に市場は多くの人でごった返していたし、クーフィーヤ(パレスチナの伝統的織物)を生産する工場や、陶器・ガラス工場も有名である。
 ただしこの街に置かれ、ずっと横たわってしまっている「わけのわからなさ」が、帰国してからも心の中でずっと中途半端になっている。それはヘブロン入植地問題の現状、ということとまた、問題を私はどう捉えるべきかにある煮え切らなさの両方にあると思う。
 感じたことを書こうとしているので詳しい説明は省きたいのだけれど、ここには、一神教(つまりムスリムとユダヤ教徒双方)にとっての聖地がある。そこで聖地を目的に入植してきたユダヤ人入植者450人と、入植者を守るイスラエル兵(と警察)1000人がヘブロンに住んでいる。入植者の側は2000年以上前にはここはユダヤの土地だったのだから、と言いパレスチナ人の居住を許さず、商売を許さず、通行を禁止して元々あったヘブロンの旧市街を、まるでゴーストタウンにしてしまった。元々商店の建ち並んでいた通りを緩衝地帯に、パレスチナ人とユダヤ人入植者の区域が分けられてしまい、これらを行き来できるのは、イスラエル人と外国人だけである。
 パレスチナ側を歩いているとき、「上から町を眺められるから」とパレスチナ人の青年に、ある家の屋上に上らせてもらった。町を囲む丘の上にはイスラエルの施設があるのがわかる。また入植者の家からゴミが投げつけられるなどの被害もある。通りを挟んですぐのところに見えるムスリムのお墓には、いまは簡単に行くことができないのだという。熱心に説明してもらいながら、正直に言うと私はドキュメンタリーを見ているような気になっていた。テレビとか、スクリーンの中の話を聞いているような。そのあと、外国人だから通ることのできる人気のないユダヤ側になった通りを歩いていても、銃を持った若いイスラエル兵士の写真を撮っても、私の感覚はそのままだった。
 こういう時、もっと、怒りを感じたりとか、なにか自分を奮い立たせるような言葉を言い聞かせたりとかするものだけど、3年前に分離壁や、検問所を経験したときのそんな気持ちとは違っていた。ここでは何も出てこなかった。
 なんでこんなになっちゃったの?もっとなんとかできなかったの?10年以上も前からだなんて、既成事実化させてしまっていいの?悔しすぎる、なんとかやり返せないの?目の前の状況に疑問を持ちながらも、私に何が言えるだろうという気持ちが消えてはいかない。ヘブロンには多くの外国人が足を運んでいる。「ツーリスト」としてバスに乗ってきて、ヘブロンの異常さを見て、監視カメラなんか見つけて写真を撮る、帰っていく。おかしなこのエリアを歩いていたとき、私は早く出たい!と思った。そして検問所を通り抜けてきた!というところに「アパルトヘイトストリートへようこそ」「ゴーストタウンと戦う!」と書いてあるブロックが積まれていたりして、お化け屋敷のような、そういう作りこまれたものを見てきたような気持ちになる。旅行者は、私は、ここに人の不幸を見に来たとでもいうんだろうか。「人間ってこんなことができるの、ああ不気味だった」といってそれで終わりなんだろうか。
 ヘブロンに元から住んでいる人たちは、入植者のいやがらせ、そしてこの異様さに嫌気がさしてその多くが出て行ったという。いくら抵抗の気持ちがあっても、当然のことだろう。かわり、いま現在この境界最前線に住んでいるのは、貧しいパレスチナ人たちだといわれている。この場所に人が住まなくなり、ますます入植地が拡大するのは困る。そう考えたパレスチナ自治政府が居住者に助成を行い、住まわせているらしい。エルサレムに戻った後に聞いたこうした話も、ますます視界を暗くさせる。
あまり使ったことのなかった語彙だけれど、「蝕まれる」ってこういうことだ、と考えている。明日も、入植者はパレスチナ人を憎んでいる。明日も、兵士は24時間の監視を続ける。明日もパレスチナ人はストリートを大手を振って歩けない。明日もきっと外国人はヘブロンで衝撃を得るけど、明後日になってもヘブロンの異常事態は終わらない。入植も、住居への不法侵入をはじめとした嫌がらせも、日常風景化する。悲観的観測ではなくてたぶんそうだ。パレスチナ人の家庭で素敵な誕生日会があるかもしれないし、休憩時間にストリートで恋人に会う兵士もいるかもしれないけど、屋上から見える景色は変わらない。そう思い込まされてしまうのだ。
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